犬房女子 犬猫殺処分施設で働くということ【書評】

本屋で本書が平積みされていました。

犬房=犬猫を殺処分する施設で働く方の、実話をもとにした小説です。

犬猫の殺処分という社会課題は改善されてるとはいえ、悲惨な状況が今も継続しています。

実情を知れば知るだけ気分が悪くなるので、私はいつのころからか直視しないようになっていました。

保護犬のわたさんを引き取り、飼い続けることで自分なりにできることをやっている気になっていました。

今、殺処分の解決のために何かができるわけではないですが、本書を見かけ思わず購入していました。

本記事では一部本書を引用しています。

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あらすじ

実際に、熊本の「管理センター」という犬猫の処分施設で働いていた方へのインタビュー内容を文字にしたものです。

舞台は熊本、時代は2012年から2016年くらいまでです。

保護・譲渡を前提とし、殺処分時は麻酔で薬殺する「愛護センター」と、殺処分を前提とし、その方法は二酸化炭素による窒息死である「管理センター」が登場します。

主人公の玲(あきら)さんは管理センターで勤務されていた方です。

犬好きの玲さんが管理センターで勤務し感じた、日本が抱える問題、管理センターで働く人、個人でできることがあまりにも限られている無力感などが切実に語られています。

日本における殺処分数

2016年度、国内のペットショップで新規購入された犬猫は、のべ百万匹。
トータルの飼育数は二千万匹(環境省調べ)にものぼる。

同年、犬の殺処分数は年間10,424匹、猫は45,474匹、合計で55,998匹(環境省調べ。負傷動物の殺処分数は除外)が殺処分されている。

つまり、毎日300匹くらいの犬の命が、毎日1,000匹以上の猫の命が無慈悲に、無条理に奪われています。

何故殺処分されるのか

当然、処理施設へ持ち込む飼い主や業者が後を絶たないので殺処分される犬はなくならないのです。
では、なぜ自ら愛犬を犬を殺す施設へ持ち込むのでしょうか。

熊本県の資料によると、犬や猫の飼い主が保健所に引き取りを求める主な理由として、散歩や餌やりができない、他人に迷惑をかける、攻撃的な性格である、誰かにあげたくても引き取り手がいない、などが挙げられている。

いざ飼ってみたら、性格が攻撃的だった、子どもが犬アレルギー、そういった理由で持ち込まれることが多いようです。

本書で子どもが犬アレルギーになったから、飼っていたダックスを処分しろとわめく夫婦が紹介されていました。

管理センターは処分を断ることはできないと法律で決まっておりますが(今は改正され、引き取りは拒否できますし、終生飼育は飼い主の義務として明記されています)、「

子どもの健康を害したらどう責任を取るつもりだ、いいから処分しろ」

と一方的にわめく様子は、もし自分がその場にもしいたら怒りのあまり殴り掛かるのではないかと思ってしまうほどでした。

ちなみにそのダックスはその1か月後衰弱死したそうです。飼い主に捨てられたことを理解してしまった犬は、あまりにも絶望し亡くなってしまいます。

安易な飼育をする人がいることが諸悪の根源です。
そりゃ、10年以上あれば環境は変わることもあるでしょう。

人それぞれ事情はあるでしょうし、一度一緒に生きた犬を殺したい人なんていないはずです。

私見ですが、軽々しく犬を飼わないことと同時に、「受け皿」を増やすことも必要だと思います。最近はTVの影響か、保護犬の引き取りについて認知されつつあるようですが、まだまだです。

施設で働く人々

本書には、管理センターで働く人やボランティアの人が登場します。

管理センターには、玲さんや和美さん(という人が登場します。詳しくは読んでください)のように、殺処分される犬猫を1匹でも減らしたい、という熱意を持って、あえて犬猫好きには酷すぎる環境に飛び込む人もいれば、

逆に犬猫は嫌いという人や、特に関心がない人もいます。

始めは熱意をもっていても、絶望的な環境に耐えられず心を壊してしまう人や、諦めて淡々と「仕事」をするようになってしまう人もいるでしょう。

施設に運ばれる犬猫は、そこの担当者がどのような人かによって生きられる確率が大きく変わります。

早いと施設に入って1週間以内に殺処分されてしまうからです。

施設の様子

施設の風景は、細かく描かれています。
引用しながら、感想を交えたいと思います。

犬房の中央通路に放り出された一匹が、腰を抜かしてへたり込んでいる。

首根っこを荒々しく捕まえた一人が、氷の上を滑らせるようにずるずると引きずっていき、檻の中へむりやり頭から突っ込む。

失禁している犬。背骨が曲がって動けない犬。がりがりに 痩せこけ、あばら骨が浮き出ている犬。額の傷から 膿がしみ出している犬……。

檻の中で力なく倒れ込んだ老犬は、のしのしと歩き回る若犬に踏みつけにされながら、わななくだけでなす術もない……。

歯をむき、激しく抵抗している犬もいる。技術員(殺処分する人)の一人は、「ワンキャッチ」と呼ばれる捕獲棒(先端にある針金の輪を犬の首に回しかけ、手元のひもを引っ張ると輪が小さくしぼむ)を使いながら、あばれ回る犬を宙に吊り上げ、檻の中に豪快に投げ飛ばす。

施設の檻に入れる時の様子です。
秩序もなにもない、痛ましい様子が描かれています。

どうせ殺される命です。怪我をして苦しんでいてもそのまま。
とても現実とは思えない光景です。

大きな真っ白の犬がすぐ手前でもがいている。なにが起きているのか飲み込めず・・・

朝、犬房を覗くと、すでに死んでいたり、瀕死の状態で横たわっている犬がいたりする。胴や首を食い破られて半死半生の小型犬もいたりする。

殺処分のとき、自分の足では歩けないへっぴり腰の犬がいる。恐怖のあまり卒倒する犬もいる。彼らはそんな状態の犬を処分機の前まで引きずっていき、力ずくで扉を閉めてしまう。

殺処分の様子です。
犬同士の争いで、殺処分までも生きることができず他の犬に殺されてしまうケースもあるようです。
担当者によっては、隔離することもあるそうですが、そのまま息絶えることも。

洗浄機の高圧噴射で床に飛び散っている排泄物を吹っ飛ばし、中央通路に掘られた排水溝に落とし込んでいくのだが、技術員はノズルの先端をまっすぐ犬に向けてしまうのだ。

衛生管理の目的とはいえ、ジェット放水をもろに食らう犬はたまったものではない。はじき飛ばされ、濡れねずみになりながら、ひたすら堪え忍ぶしかないのである。

施設の掃除の時の様子です。
高圧洗浄機で犬を打つなんて・・・。筆舌に尽くしがたい行為です。

犬猫を飼っている人、飼う予定の人は読んでください

「処分」の様子が細かく描かれています。

軽い気持ちで犬や猫を飼わないよう。
飼う場合はペットショップでの購入と合わせて、保護犬の引き取りも選択肢に入れて検討して欲しい。

リアルを知ることで、気持ちが変わります。
気持ちが変われば、行動が変わります。

犬猫好きな人、殺処分を快く思わない人、読んでみてください。

では!

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